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平成28年度学位記授与式 学長式辞

福井大学は、本日ここに、海外からの留学生38名を含む総勢1,234名に、学士、修士、博士の、それぞれの学位記を授与し、あわせて18名の学生を表彰しました。めでたく卒業の日を迎えられた皆さんを心から祝福し、皆さんのご家族や関係の方々と喜びを分かち合いたいと思います。

皆さんは、福井大学での学びを通して、工学、医学、教育地域科学の各分野において、日本、そして世界で活躍できる優れた専門知識、技術、人間力を修得されました。このような素晴らしい力を身につけるにいたった皆さんのこれまでの努力に、心より敬意を表します。同時に、皆さんがここまで来ることができたのは、皆さんの家族や友人、大学の教職員など、多くの人の支えがあったからでもあるということを、皆さんにしっかり認識して頂きたいと思います。また、皆さんの優れた才能は、皆さんが社会に貢献するために授かったものであるということを自覚してください。大勢の人に支えられ、助けられてここまで来られたことや、優れた才能を授かったことへの感謝の気持ちと誇りを持って、皆さんが、これからの人生において、それぞれの立場から、それぞれが可能な方法で、社会に貢献してくれることを願います。

さて、皆さんはあまり実感していないかもしれませんが、世界は今、第4次産業革命が進行し、激動の時代を迎えています。人工知能、IoT、ロボットなどの科学技術革新やビッグデータの活用によって、現在は人が就いている仕事の半数が今後20年以内になくなるとも言われるように、これから、社会に激しい変化が起きることは確実で、皆さんも大きな影響を受けるでしょう。
同時に、世界には、シリア難民をはじめとする大量の難民問題、貧困、ISなどのテロ活動、温暖化など、解決すべき難問が山積しています。我が国にも、国民間の拡大する経済格差の是正、「働く世代」と「働き終えた世代」の利害の調整など、多くの重要な課題があります。私たちは知恵と勇気をもって困難を乗り越え、課題を解決して、平和で豊かな未来を創っていかねばならず、皆さんがその中心的役割を担うことになります。

一方で、世界の現状は楽観を許しません。昨年、イギリスが国民投票でEU離脱を決定し、また、世界唯一の超大国アメリカで、「アメリカの利益が第一」と広言するトランプ氏が大統領に選出されるなど、驚愕すべき事態が起きました。イギリス国民がEU離脱を選択したのは、他のEU諸国からの移民を含め、移民や難民の増加が自分達の生活を苦しくした原因と考える人達が増えたためだと言われています。フランスやオランダなどのEU先進国で極端な排他主義を掲げる政党が躍進しているのも、同じ理由によると言われます。移民の国であるアメリカでさえ、トランプ大統領は、国民の利益が損なわれるとして、難民受け入れの縮小と不法移民を厳しく取り締まる方針を打ち出し、さらに、広範囲の自由貿易から米国の利益を重視した二国間協定締結へ舵を切るなど、「アメリカ第一」の政策を推し進めています。これまで、社会のグローバル化は世界を豊かにし、人々を幸せにすると考えられてきましたが、その恩恵にあずかれない人達が各国で増え、中間層が没落して貧富の差が拡大した結果、世界は今、排他主義、保護主義、ポピュリズムの傾向が強まり、第二次世界大戦を教訓に、戦後、平和と繁栄のために世界が進めてきた協調路線が変化しようとしています。今後、世界がどうなっていくのかは予断を許しませんが、社会の分断が進み、未来が争いの時代になることは受け入れられません。

このような激動の時代に社会へ巣立っていく皆さんに、皆さんの学びはけっしてこれで終わりではないということを伝えたいと思います。人工知能などの科学技術の一層の進歩により、皆さんが就く教師、医師・看護師、エンジニアを含む、社会のほとんど全ての職業において、必要とされる知識、技術、能力の質が、今後、大きく変わるでしょう。変化を続け、新たな考え方や発想の飛躍が求められる社会で、皆さんが自分の役割を果たし、社会に貢献するためには、これまでの学びだけでは十分とは言えず、卒業したからといって学びを止めてはいけません。中国の思想家荀子は、「学は以て已むべからず。青はこれを藍より取れども藍よりも青し」と述べています。皆さんはこれからも学びを継続して、一層美しい青になってください。

また、どの国も一国だけで成り立っていくことはできないということを、忘れないでください。私たちは、自国の論理を主張し、他を排除するのではなく、異なる価値観が存在することを受け入れ、異なる考えを持つ世界の人々と共存していかねばなりません。人類は地球上の生物界の頂点に立っていますが、そうなれたのは、他の動物が持たない能力、なかでも、他の人の行動の意味やその自分との関わりを思いはかることができる、高度な精神性を持ったからだとも言われています。決して他人を排除した結果ではありません。皆さんには、多文化理解、多人種共生を可能とする開かれた思想性と、自由、公正、正義の信念に従って、平和で豊かな社会を創るという、人類の目標の達成に貢献して頂きたいと願います。

海外からの留学生の皆さんは、この間、日本および日本人について、長所、短所を含め、様々なことを学び、理解を深めたことと思います。皆さんには、その知識や経験を生かして、是非、福井や日本と皆さんの母国や世界を結びつける役割を担い、世界の平和と調和のとれた発展のために貢献してくれるよう、願います。

結びに、皆さんの輝かしい門出に際し、皆さんのこれからの人生に幸多かれと祈ります。私ども教職員一同は、福井大学がいつまでも皆さんが誇りに思える大切な母校であり続けられるよう、一丸となって前に進んで行きます。皆さんも、福井で過ごしたことを大切にし、また、福井大学で学んだことを誇りとしてください。そして、福井大学の同門の絆を大切に、先輩との連携を深め、また自らも後輩をかわいがる頼もしい先輩になっていってくれることを願って、式辞といたします。

平成29年3月23日
福井大学長 眞弓 光文