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平成29年度入学式 学長式辞

開花の遅れていた福井の桜も、まるで皆さんの入学を祝うかのように、一斉に咲き始めました。長い冬を耐え、みごと福井大学入学を果たされた1,365名の学部ならびに大学院入学生の皆さん、入学おめでとうございます。福井大学を代表し、皆さんの入学を心から歓迎すると共に、皆さんが長い間しっかりと研鑽を積んでこられたことに敬意を表します。また、これまで皆さんを支えて来られたご家族や関係の方々に、心からのお慶びを申し上げます。

さて、新入生の皆さん、皆さんは自分が今、どんな時代を生きているのか、認識していますか? 世界は今、人工知能、IoT、ロボットなどの科学技術革新やビッグデータの活用が急速に進み、第4次産業革命と呼ばれる激動の時代に入っています。今後20年もすれば、現在は人が就いている職業のかなりのものを人工知能やロボットが代わって行うようになるとも言われています。皆さんが卒業後になる教師、医師・看護師、エンジニアなどの職種においても、求められる知識、技術、能力が、将来、大きく変わると考えられます。
一方、世界には、シリアをはじめとする大量の難民、拡大する経済格差、ISなどのテロ活動、温暖化、アフリカにおける爆発的人口増加など、対応すべき難問が山積しています。我が国においても、これから人口減少が加速し、このまま行けば今世紀末には現在の半分以下にまで人口が減少すると予測されており、この急激な人口減少が社会に重大な影響を及ぼすことは必至です。少なくとも今後数十年間、医療費や年金などの社会保障費が増加する一方、生産年齢人口の減少による生産力の低下が懸念されます。また、人口減少と首都圏への一極集中の結果、地方の多くの自治体が成り立たなくなるなど、国土の不均衡がさらに拡大する危険性があります。

今、私たちは知恵と勇気をもって、これらの難問を解決し、社会の分断を防ぎ、平和で豊かな未来社会を創っていかねばなりませんが、まさに皆さんがその中心を担います。一方、昨年、イギリスが国民投票でEU離脱を決定し、また、世界唯一の超大国アメリカで「アメリカの利益が最優先」と広言するトランプ氏が大統領に選出されるなど、世界は激動しています。イギリスの国民投票でEU離脱賛成派が勝利したのは、他のEU諸国からの移民を含め、移民の増加が自分達の生活を苦しくしたと考える国民が増えたためだと言われています。フランスやオランダなど他のEU主要国でも、極端な排他主義を掲げる政党が勢力を増しています。移民の国であるアメリカでさえ、トランプ大統領は、アメリカの利益が損なわれるとして、難民受入の縮小や不法移民を厳しく取り締まる方針を打ち出しています。これまで、グローバル化により世界は豊かに、人々は幸せになると考えられ、社会のグローバル化は必然と思われてきましたが、各国でその恩恵にあずかれない人が増え、また、中間層が没落して貧富の差が拡大した結果、世界は今、排他主義、保護主義、ポピュリズムが隆盛になり、第二次世界大戦を教訓に、戦後、平和的な繁栄を目指して世界が進めてきた協調路線が変化しようとしています。

私たちはこのような激動の時代を生きています。そんな私たちが思い起こすべき重要な指摘があります。それは、人類が地球上の生物界の頂点にいるのは、他の人の行動の意味するところや、その行動に至った考えを思いはかるという高度な精神性を持って、互いに共存してきた結果である、という指摘です。単に、火を自由に操るすべを知って道具を高度化したからではなく、ましてや、他を排除した結果ではありません。いつの時代にも、異なる思想、信仰、価値観の対立が起こりますが、おのれの論理を主張するだけではなく、異なる考えや価値観が存在することを受け入れ、世界の人々との共存を進めていかない限り、世界はかつて歩んだ戦争への道を再び歩むかもしれないと危惧されます。

さて、世界がこれからも調和の取れた発展を続けていくには、社会が抱える課題を解決できるイノベーションの創出が必要です。なかでも、天然資源に乏しい我が国にあっては、人こそが未来を開く唯一の資源です。社会は、優れた才能の持ち主である皆さんが大学でその能力をさらに高め、イノベーションの創出に貢献出来る人材となることを期待しています。どうか皆さんは、自分の優れた才能は社会に貢献するために授かったものだということを自覚し、福井大学で真剣に学び、高度な専門知識や課題解決力を培って、平和で豊かな社会の創出に向けて社会を牽引していくことの出来る人材に育っていってくれるよう、願います。

また、皆さんには、高度な専門知識や課題解決力以外にも、身につけるべきものがあります。皆さんの多くはこれまで受験勉強に追われ、自分自身を見つめたり、社会を考えたりすることはほとんどなかったと思いますが、これからの学生生活で、歴史に学び、様々な知識を得て、何が正義か、どうあるのが公正かを正しく判断できる、「内なる規範」を確立してください。同時に、国内外の多様な人と交流して、己を知り、世界を知って、アイデンティティーを確立すると共に、多文化理解、多民族共生を可能とする柔軟で開かれた思想性を身につけてください。これらを身につけて、皆さんが、激動する社会の変化にただ押し流されるのではなく、真に公共に貢献できる人に育ってくれることを願います。

今、国内外の多様な人と交流することの重要性を申しましたが、人との交流には、知識、思想、内なる規範など、高い教養や優れた人格が必要で、中身のない人に本当の交流はできません。書に親しみ、教養を高め、人としての中身を磨く必要がありますが、同時に、世界の人と交流するには、コミュニケーションするための語学力、なかでも世界共通語とも言える英語の力が必要です。福井大学には、英語を母国語とする英語教育専門家による英語の授業、好きな時間に自由に学べる語学自修センター、留学生との交流の場である国際ラウンジなど、充実した語学教育プログラムや学びの場があります。皆さんはこれらを十分に活用して、語学力を高めてください。福井大学では、こうして英語力を高めた学生が毎年250名程度、海外での研修に参加しています。海外での研修は世界を知り、自分を知る良い機会なので、皆さんも是非、後に続いてください。

皆さんが激動する社会で活躍するための力をつける学びが、まさに今から始まります。その学びを通して、皆さんの前途は必ずや洋洋たるものとなるでしょう。しばらくは受験勉強の疲れを癒やし、心にゆとりを持って自分を見つめ直してほしいと思いますが、「少年老い易く学成り難し」です。社会に出た後で、学生の時にもっと勉強しておけば良かったと後悔し、勉強しようと思い直しても、社会に出てからでは学生の時ほど勉強時間が取れません。皆さんは、せっかく得た福井大学での勉学の機会をいたずらに浪費することのないよう、しっかりと学び、充実した学生生活を送って下さい。

海外からの留学生の皆さんは、慣れない異国での学生生活、期待と共に不安もあるかと思いますが、福井大学で多くを学び、貴重な経験を積み、友人を得るなど、充実した留学生活を送って頂きたいと願います。

真剣な学びを通して日々成長していく皆さんの姿を見ることは、私たち教職員にとって最大の喜びです。福井大学教職員一同、皆さんの学びと成長を全力で支援することを約束して、式辞といたします。

平成29年4月6日
福井大学長 眞弓 光文