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令和元年度学位記授与式 学長式辞

福井大学において本日、学位記授与式を迎えられた学部卒業生ならびに大学院卒業生の皆様に対し、お送りする側を代表し、心よりお慶びを申し上げます。
今年度はすべての方に申し上げられず残念ですが、皆さん、ご卒業 誠におめでとうございます。
まずは本日まで皆さんを支え様々なかたちでご支援いただいたご両親、ご家族、ご指導いただいた先生方、等々に対し生涯忘れることのない感謝の気持ちを持って下さい。
そして、学門の府の卒業生として、社会に出てからも、学びの仕方は学生時代と異なると思いますが、生涯学び続ける意欲を持っていただきたく思います。
また、海外からの留学生の皆様には、異国における学生生活でしたが、長い間、本当にご苦労様でした。母国に帰られても、我々との友好の気持ちが末長く続くことを願っています。

さて在学期間2年より6年にわたる福井での学生生活を終える皆さんをお見送りする言葉として、まずは新しく本学にできた理念について述べます。
この理念については、昨年末にようやく完成をみたため、充分皆さんの学生生活において意識していただくことができなかったのは残念ですが、今後の社会での生活において、節目節目で是非想起していただきたく思います。
福井大学の新理念は「格致によりて人と社会の未来を拓く」です。
この中で一番皆さんになじみのない言葉は「格致」だと思います。この語は中国の古典「大学」にあり、幕末の高名な福井藩主である松平春嶽公揮毫による額が、旧福井大学初代学長・竹内松次郎先生のご尽力により本学にもたらされ今も保管されています。格致とは「物事の道理や本質を深く追求し、理解して知識や学問を深めうること」を意味します。
そして本理念は、「格致を旨とし県内はもとより国内外の様々な地域において、そこに集う人々ならびに社会の未来を拓くことに主体的に関わり貢献すること」を意味します。

また、同じ主旨で4つの学部、附属病院、附属学園でも理念が制定されています。
時間の関係で各理念の文言のみ紹介しますと、
教育学部「新しい時代にいきる子供たちの未来を拓く教師をめざして」
医学部「愛と医術で人と社会を健やかに」
工学部「夢を形にする技術者、IMAGINEERを目指して」
国際地域学部「未来志向で地域に織り込む世界へのまなざし」
附属病院「最新―最適な医療を安心と信頼の下で」
附属学園「夢をもち未来を生きる子の育成」
と連なります。心にとどめていただければ幸いです。

さて、卒業間際になって皆さんをまた我々を悩ましている大きな出来事として新型コロナウイルス感染症があります。この感染症は、昨年末に中国で初めて確認され、その後の数か月であっという間に日本を含む世界各地に伝搬した急性の致死率も高い感染症として今世界が注目しています。

このコロナ感染症について皆さんはどう思っているでしょうか。医学の進歩した社会と思っていたのに、かくも医学は無力であるかと、がっかりした人もいると思います。しかし詳細に今回の感染症を振り返ってみるとそうとも言えません。例えば人類が唯一根絶したとされる致死性のウィルス感染症である天然痘は紀元前350年には記録されています。
しかしもちろん病原体がウィルスであるという知識はありません。その後年月を経て予防法として牛痘の接種がジェンナーにより行われたのは1796年のことで、実に2千年近い時が経っています。一方、今回のコロナウイルス感染症COVID-19はいかがでしょうか。本感染症は昨年12月に中国で報告され、その後の急激な拡大は世界を驚かせましたが、武漢で感染がおこった時、既にSARSやMARSと同様のコロナウイルス感染症であることが推測されていました。
翌1月7日には新型コロナウイルスであることが、ついで12日には全遺伝子配列が同定されました。
現在特効薬とまではいきませんがエイズに効いた薬剤などが有効な可能性があるとして臨床応用が検討され、決め手となる専用ワクチンの開発も進んでいます。WHOにより全世界的に感染の予防対策も示されています。天然痘の2千年に対し、わずか2か月程度でここまで封じ込めつつあることも驚くべきです。勿論、高齢者中心に不幸な転機を取る方もあり、ヨーロッパでは急速に拡大している現状では、とても勝利とは言えませんが、医学の進歩の大きさも実感できると思います。
そして、天然痘ウィルスでは、先人達がつなぎつないで2千年で実現できた予防の成果に対して、進歩の早い現在では、諸君一人一人の一生のうちに自らの経験として、医学に限らず人類に大きな貢献ができる可能性に気づき、目覚ましい人類の進歩の流れに身を置くことによる生きがいについても考えてみてください。
しかし一方ではそのような英知が原子力兵器の開発や、様々な戦争の手段として用いられ、また国々の争いが起こっているのも人間の性であり、両者を公平な目で見守ることが必要です。
皆さんは新しく令和の時代をこれから生き抜く人として、大正、昭和、平成とは異なる新たな令和人としてのイメージを築いていただきたいと思います。

さて、地域の国立大学である福井大学においても、順調に留学生が増加していることを、非常にうれしく思っています。まだまだ施設的な整備も十分でなく、また心の面でも皆さんのトラブルに対応できる受け入れ態勢が不十分なことも多いと思いますが、毎年開催される「留学生との交歓会」の集いにおいて、各々の国の異なる文化、異なる国民性にふれると、非常に勇気づけられます。 
先に述べましたが、世界は必ずしも国同士の友好性が確立している状況ではありませんがそのような時こそ国と国でなく、人と人としての友好関係が非常に重要であるとの思いをいつまでも共有したく思います。各国からの留学生の皆さんの独自性のある文化を拝見するときに、福井で最もグローバルな経験をしていると感じます。福井での経験が皆さんが母国へ帰って、或いは国際的に活躍されるときにプレゼンできる貴重なお土産になっていることを期待します。

ところで、私が年始に、理念と共に、今年度の目標として、本学の皆さんに提起させていただいたキーワードは、「スピード感」と「説明責任」の二つです。現在の我が国のめまぐるしい情報化社会、競争社会で生き残るには、迅速に行う、できるときには必ず行う位のスピード感が求められます。
一方、大学は、本来時間をかけてじっくり未知の課題に取り組む、先述した「スピード感」の馴染まない側面を重要としています。しかし、その大学の特殊性につきステークホルダーの納得を得るには、十分な説明責任を果たして、信頼関係を築いておかねばならず、スピード感と説明責任の両者は車の両輪的存在です。このことは、大学のみならず、どの組織においても特に新人には重要なことと思うのでお話ししました。

さて私が本学の学生諸君と面談などする時、他大学の学生に比べてまったく劣らぬ或いはそれ以上の能力、実行力があるのに、それが十分前面に出てこないと感じる事があり、少々残念に思っています。その時必要なものは何でしょうか。私に思いうかんだもの、それは、自らに対する良い意味のプライドです。
皆さんには、自らに対する今少しの自信とプライドをもって社会と世界を歩んでいただきたいと思います。

結びになりますが、皆さんは我々が本日、自信をもって世の中に送り出す884名の学部卒業生と382名の大学院生です。謙虚な心と同時にプライドもあわせ持ち、自らのペースで今後の社会に乗り出して頂きたいと思います。

以上をもって祝辞といたします。

令和2年 3月 23日
福井大学長 上田孝典

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