この度、福井大学学部並びに大学院に入学された皆さん、誠におめでとうございます。ご入学を心より歓迎致します。併せて、これまで皆さんを支えてこられたご家族の方々等にもお慶びを申し上げます。
さて本学入学式は、コロナ禍のため3年連続で規模を縮小して行ってきました。今年ようやく学生1名につき家族等1名の同時参加を認めることと致しました。マスクの着脱については基本的に個人の判断が優先されますので皆さんもTPOに応じて迅速に着脱を判断する習慣を身につけて下さい。本感染症の今後については毒性の強い変異株出現の有無が重要であり、注目しておいて下さい。
さて、学生の皆さんにとって最も重要な本学の教育目標は、卓越高度専門職業人の育成です。現代社会はsociety5.0社会と言われます。それはフィジカルとサイバーの融合により形作られた理想的な社会とされますが、反面、現在実在する多数の職業が姿形を変えることとなり、しかも多くは消滅すると言われます。我々の言う卓越のつく高度専門職業人は、一芸に秀でると同時に、その関連分野を包含する適応能力を併せ持ち、Society5.0時代にしなやかに自己実現可能な人材を言います。皆さんも在学中に卓越高度専門職業人のイメージをしっかり掴み、しなやかに生き抜く努力をして下さい。そのために、各学部では必要な教育プログラムを十分に用意しています。
その成果の一つとして、本学は全4学部の就職率で全国15連覇を達成しています。新入学生の皆さんに知って頂きたいのは、これに関連して、3年離職率が全国平均の3分の1、そして1年離職率が全国平均の10分の1と著明に低く、これはおそらく、自分の納得できる就職先が決まれば、腰を据えて頑張るのが、福大生気質であり、それに相まっての学生とキャリアセンターがタッグを組んでの就職マッチングと併せての誇るべき成果と考えています。皆さんも入学を機に、どうぞ今後の人生の生き方を少しずつ考えていただければと思います。
留学生の皆さん、ようこそ日本へいらっしゃいました。ようやく、出入国のスケジュールに沿っての移動が、ほぼ可能となり喜んでいます。皆さんの学内における地道な教育、研究、社会貢献の努力が大きな国際連携などとして花開くことを期待しています。その意味で、母国以外の地での居住経験があり、将来指導的立場に立つ可能性が強い本学留学生の皆さんの国際的立場での指導力に大いに期待しています。
ところで、今後皆さんが大学生として過ごす福井大学とはどういう大学なのか、改めて少しご紹介します。一つは本学の理念である「格致によりて人と社会の未来を拓く」です。これは、「道理を極め、知的判断力を高める」と言う意味です。次いで二つの未来に向けたビジョンで「世界に通じる地方総合大学」「社会から頼りにされる活力ある大学」を目指しています。皆さん、理念、ビジョンと言われてもピンとこないかもしれません。しかし、例えば国際交流で福大の紹介をする時、或いは就職面接で大学を語る時、きっと役に立ちます。堂々と自信を持って語ることが重要です。本学は真理を追求する大学であり、地方にあっても得意分野では高いレベルを目指し、地域、特に本学のステークホルダーとしっかり交流して地域社会との連携も強い地方総合大学であることを理解しておいてください。
皆さんがこれから大学生活を送るにあたり心に留めてほしいことを二つ述べます。まず、昨年のサッカーワールドカップ、先日のWBCなどでスポーツを通じた国際交流の素晴らしさが実感できました。一方、ロシアのウクライナ侵略という実際の国家間戦争も知るところとなりました。このように国家同士が相対立する中、重要なのは世界に暮らす国家や民族にとらわれぬ人間同士の交流であり、そこで培う共感性であると思います。「共感性」は、どんなにオリジナリティが尊重される領域でも、必要なものです。
もう一つは「プライド」です。多くのステークホルダーから指摘される事ですが、福大生は、いい意味でのプライドの持ち方が弱いです。少ない、小さいより、弱いという表現が適当と感じます。自分に自信を持ち、それをしっかりアピールして下さい。
ところで、本学は文京、松岡、敦賀の3キャンパスにある4学部からなります。公共交通機関が乏しく、キャンパス間交流は十分とは言えない中、今後はコロナ禍の影響で逆に飛躍的に進歩したオンラインでの講義等もしっかり活用し、全学的交流に向け前進したいと思っています。各学部の連携協力も必要であり、その時は、あまり古い色に染まっていない若い人達のパワーが重要です。
大学にとってキャンパスは、学生諸君の学び、交流、人としての成長に大変重要です。昨年までの学生交流センターの整備等に加え、諸物価や電気料金等高騰の折ではありますが、多くの皆様からのご支援も得て、キャンパスの充実化を実現していきたいと思っています。
結びです。本学では、多様な人々が、多様な目的のために、多様な方法で、世界とアクセスしつつ学び実践します。皆さんが今期待している充実したキャンパスライフ、それを実感して頂けるよう努力することをお約束し私からの式辞といたします。
令和5年4月6日
福井大学長 上田孝典