大学案内Viewbook2019
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「想定外」はエンジニアの恥考え尽くして結果を出すSTUDENT’S VOICE見えないものを見るために電波と光の中間領域を使いこなすわれわれが「物を見る」というとき、厳密には物そのものを見ているのではなく、物に当たった光の反射を見ています。光は波の性質を持っていますが、その周波数は、電波の領域と連続的です。その電波と光波の中間領域、周波数300GHzから3THzの範囲の電磁波をテラヘルツ帯といって、サブミリ波から遠赤外線までを含みます。普通の光の反射では見えない物体の内部や生体内のタンパク質の振る舞いなどを「見る」ために、このテラヘルツ波を使いこなそう、というのが、私たちの研究テーマです。通常、光を集めるにはレンズを使いますが、レンズには屈折率の限界があって300㎛以下には絞り込めません。テラヘルツ波で微量の試料を測定しようとするときには、電磁波をもっと小さいサイズにまで絞り込む必要があるのです。そのために有効だと思われるのが、V字型の溝を切った金属導波路です。テラヘルツ波がV字型の溝に沿いながら通っていくときに、超集束と呼ばれる現象が起き、密度の高い電磁波が得られるのです。この方法が確立され、安定した検出精度が出せるようになれば、医療や非破壊検査など多くの分野で実用化が進むと期待されており、大変やりがいのある研究だと考えています。PROFESSOR’S VOICE電磁波を利用した物質の測定のために、V字型の金属導波路について研究しています。電磁波は、V字の先端部に向かうにつれて生クリームの絞り器のように絞り込まれていき、それだけパワー密度は増大していきます。そのV字の角度はどれくらいが最適なのか、どれくらいの損失があるのか、さまざまに条件を変えながら、シミュレーションと実験を繰り返し、データをとって、最適な照射のコンディションを見つけ出すのが課題です。研究室は、先生や先輩たちが試行錯誤しながら手作りしてきた装置で埋め尽くされています。私も、実験装置の進化にささやかながら貢献しています。これまで活用されていなかった帯域の電磁波を扱うので、実験では予想もしていなかった結果が出ることもあるのですが、この研究室では「想定外でした」は禁句です。想定外のことも想定に入れる、それが研究するということであり、「考える」ということだ、と教わりました。修了後は企業のエンジニアとして働くことになりますが、自分の力で考え尽くす姿勢は、大切にしていきたいと思っています。45UNIVERSITY OF FUKUI遠赤外応用技術 研究室WELCOMETO MYLABORATORYSchool of Engineering 工学部田畑 寛明 さん大学院工学研究科 博士前期課程 電気・電子工学専攻 2年山形県立酒田東高等学校出身山本 晃司 准教授専門分野:テラヘルツ分光
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