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おしゃれな宇宙服?アラミドエアロゲルの挑戦STUDENT’S VOICE材料としての繊維の新しい可能性を開く試みPROFESSOR’S VOICEエアロゲルは、ナノ単位の小さな穴が無数に開いた物質です。非常に低密度な固体で、「凍った煙」や「固体の煙」とも呼ばれ、断熱材や防音材、また表面積が非常に大きいことから触媒を固定する土台としての利用が期待されています。エアロゲルを作る素材は、無機物ではシリカ、有機物ではセルロースがメジャーですが、シリカは強度と柔軟性に難があり、セルロースは耐熱性が低く、燃えやすいという欠点があります。これらの欠点を克服するために、私は作業服や防弾チョッキなどに使われる高強度繊維のアラミドに着目して、これをエアロゲル化する工程を検証し、その構造と性能を制御する手法を研究しています。アラミドエアロゲルは、アラミドを溶かした溶媒を気体に置換することで作れるわけですが、その際の条件の設定によって、構造と性能を作り分けることができると考えています。エアロゲルはきわめて低密度なので軽くて動きやすく、そこにさまざまな性能を作り込むことで、超機能的な宇宙服や防護服など、近い将来、世の中を大きく変える製品開発に結びつくかもしれない。そんな夢の広がる研究です。49UNIVERSITY OF FUKUI繊維機能科学 研究室染色・機能加工グループWELCOMETO MYLABORATORYSchool of Engineering 工学部鈴木 優美子 さん大学院工学研究科 博士前期課程 繊維先端工学専攻 2年奈良県立平城高等学校出身廣垣 和正 准教授専門分野:繊維材料、染色化学、コロイド化学福井は伝統的に繊維産業が盛んな土地です。古い産業としての側面が強調されるきらいがありますが、実は繊維には先端材料としての大きな可能性があります。私の研究グループでは、その可能性を広げるためにさまざまな角度からアプローチしています。一つは水を使わない繊維の染色・加工です。世界では、1年間に染色・加工に地中海一杯分もの水が使われています。二酸化炭素を高温、高圧にして、気体でも液体でもない超臨界流体と呼ばれる状態にします。これを水の代わりに使うと、排水が出ないので、水資源を保護でき、染色・加工工程の合理化と環境負荷の低減の両面に貢献します。もう一つ、色に関しては従来の「染める」という概念から離れて、「構造色」の研究を進めています。孔雀の羽根のように物質表面の構造と光の相互作用で発色するもので、構造が保たれる限り変色することがなく、色素では出せない美しい光沢のある表現が可能になります。繊維の表面に微細構造をつくり、その構造を制御することで、光を選択して反射したり、曲げたりすることが可能になります。さらに、電気に変えて光を信号伝達に用いたり、エネルギー源として光をためたり、運んだりするための材料が実現できるかもしれません。繊維の可能性を広げ、新しい未来を創造していきたいと思います。

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