大学案内Viewbook2019
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中性子が散乱するときのカオスのような運動に秩序を探すSTUDENT’S VOICE物事の本質をつかみ出そうとする知的な挑戦、それが物理学物理学は理論的・原理的な学問分野です。私自身の研究分野は原子核理論で、原子核を構成する陽子と中性子の振る舞いを記述する方程式を立てて計算します。同種の粒子がたくさんある系の量子力学で、有限量子多体系と呼ばれています。原子力や放射線の利用に対して、理論的な基礎を提供する研究です。原子核理論、量子力学の基礎方程式は、すっきりとした解が求めにくいのが常ですが、近似値の中から現象の本質をつかみ出す努力が必要だと思っています。一方、学生は各人が興味を持って主体的に取り組めるテーマを選んで研究を進めています。たとえば、宇宙に興味のある人は中性子星の研究を、原子力の問題を追究したい人は原子炉の放射能の時間変化や原子核の放射性崩壊の計算を、変わったところでは、当研究室でトレーニングしているデータ・サイエンスの手法を用いて、為替レートなどの経済現象を考察している人もいます。それぞれテーマは違っても、物事の本質を追究する姿勢こそが物理学。私は学生諸君のことを、ともに語り合う仲間だと思っています。PROFESSOR’S VOICE原子核に1個の中性子がとらえられた状態はランダムな系で、そこには規則性はない、と一般には考えられています。でも、もしそこに秩序構造が見つかったら…。原子核理論をシンプルな方程式で表すことができ、理論物理学の研究に新しい局面を開くことになります。日本原子力研究開発機構が提供している中性子の散乱に関する膨大な実験データを統計処理することで、カオスの中に秩序を探し出そうとするのが、私の研究テーマです。世界中の研究者の常識に挑戦するような大きなテーマですが、複雑な現象を美しい数式で表すのが物理学の醍醐味。現在は、Python(パイソン)という科学技術に特化した言語を用いて、統計処理のプログラムを作っているところです。もちろん、簡単に規則性が見つかるとは思っていませんし、研究の結果、やはり規則性はなかった、という結論になったとしても、私にとっては、科学的なものの考え方、コンピュータ・サイエンスと数学的な手法を身につけるという点で、これは将来の私を支えてくれる意味のあるチャレンジだと感じています。51UNIVERSITY OF FUKUI原子核理論 研究室WELCOMETO MYLABORATORYSchool of Engineering 工学部湯口 穂乃 さん物理工学科(現:応用物理学科) 4年静岡県立島田高等学校出身田嶋 直樹 教授専門分野:原子核構造論
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