
“人の目”を超える!
AIの挑戦
- 張 潮
- Chao Zhang
- 工学部 講師(コンピュータビジョン・パターン認識)
Profile
1988年、中国浙江省舟山市生まれ。2011年に来日し、2017年岩手大学大学院工学研究科 博士後期課程 デザイン・メディア工学専攻 修了。同年、福井大学工学部電気電子情報工学科助教、2020年より同講師。
研究者詳細ページ
人間と機械のメリット
現代の自動車工場の生産ライン。ずいぶん自動化されている印象でしょう。でも実は重要なパーツや製品を検査する工程ではまだまだ人の目頼りです。人の目には、形や傷の深さ、色の濃さなど微妙な違いを捉え、瞬時に不良品を発見する能力が備わっているのです。一方で、長時間働くと疲れて検査能力が低下するという弱点があります。自動車工場では車のルーフなどに使われる畳二畳分ほどの大きさの鋼板に傷がないか隅から隅まで探す検査工程があります。このような高い精度を要求される検査を目視によって安定的に達成することは簡単ではありません。私は「ニューラルネットワーク」と呼ばれる脳の神経回路の働きを模倣した情報処理の仕組みによるAI(人工知能)の機械学習を使って、自動車工場で行われているような精密な検査を自動化できないか研究しています。
彫刻家のようなシステムづくり
目視検査を自動化するには、AIに良品と不良品それぞれ画像認識して違いを学習させなければいけません。しかし、工場では良品が殆どで、不良品はあまり出ません。そこで学習素材としての不良品モデルの画像を作成する手法に取り組んでいます。必要な不良画像は数万枚にも及ぶので、学習に有効な画像をいかに効率的に作るかが課題です。
さらに良・不良(正常・異常)の分別を覚える学習をニューラルネットワークで行うのですが、数億もあるネットワークの単位「人工ニューロン」同士の情報伝達の重み付けを生産ラインのニーズに合わせて調節し、システムを最適化します。
いわば彫刻の制作のように、余計なものをうまく削り落としていく研究で、「カッコイイ形をどう、作っていくか?」が腕のみせどころとなります。
現場のニーズに寄り添って、人間の目を超えた“機械の目”コンピュータビジョンを実用化していけば、製造業に新しい世界が見えてくるのではないかと思います。
最近はキャンプしています。画像は越前海岸沿いのキャンプ場に行ったときの写真です。家族キャンプで焚火料理を楽しんでいます。夏以外の季節に福井周辺のキャンプ場に出没しています。
