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膨大な史料から真実を見出す

中澤 達哉先生

教育地域科学部
社会系教育講座
中澤 達哉先生

教育地域科学部 社会系教育講座

中澤 達哉先生

決定打は小さな新聞記事

皆さんは、ヨーロッパにおける封建制から自由な民主制への移行は、フランス革命をはじめとした革命運動によって実現した、と習いませんでしたか?実はそれ、事実ではないかもしれません。
私は、大学院生の頃から、東・中央ヨーロッパの歴史(東中欧史)について、国民形成の過程を中心に研究を進めてきました。特に関心を持ったのは、多民族が共生し、オーストリア・ハンガリー帝国、チェコスロバキアと歴史的な変遷を遂げたスロバキアです。

国内での研究を経て、1997年から1999年までスロバキア科学アカデミーの歴史学研究所に客員研究生と して留学しました。現地の文書館で、大量の冊子や新聞、雑誌などの史料を収集し、研究所で読解。解釈に妥当性があるかを恩師に評価を仰ぎ、批判してもらいながら、理解を深めていきました。

研究を進めていく中で、近代ヨーロッパにおける民主制の確立過程について、従来の定説に疑問を抱くようになりました。決定打になったのは、オーストリア・ハンガリー帝国時代の新聞に小さく掲載されていた.udovit .tur(リュドヴィート・シトゥール)議員による国会演説(1847-48年)の記事です。封建制の枠組みを生かして、スロバキア人の国を作ろうと提言していたのです。

外からの視点に期待がかかる

客員教授としてスロバキアの大学で授業した様子

客員教授としてスロバキアの大学で授業した様子

封建制下では、国王や貴族、農民など、人々は身分で区切られていました。中でも、「社団」と呼ばれる貴族など上位の身分層は、国王と主従関係で結ばれており、国王に忠誠を誓う代わりに、権が与えられていました。

社団に属する要件は「出自」で、血筋や家系が判断基準でした。シトゥール議員は、これを、同じ言語や文化で構成する種族上の出自に読み替えることを提言。これにより、社団の枠を農民などの下位の身分層にも広げ、実質的に民主制を導入しようとしたのです。

この演説は、支配層が多数を占める議会で批判されましたが、長い年月をかけて民主的な国家が形成される起源となったようです。従来は、封建制というと、民主制と対立する概念とされていましたが、少なくともスロバキアの国 民形成においては大きな影響を及ぼしていることが解明できたのです。

2007年に英語でこの成果を発表すると、現地スロバキアやイギリス、韓国などの諸外国で論文が評価されました。固定観念を持たず、外からの視点で研究を進めていることがヨーロッパ人には斬新であり、新たな学説への期待も生まれているのだと思います。

違った角度からものごとを見る

学生の皆さんには、歴史はもちろん、ものごとを鵜呑みにするのではなく、別の角度から見る力を持って欲しいと考えています。新しい史料の発見によって、これまでの定説が覆ることがあります。批判的視点など、違った角度から ものごとを見ることで発想を広げるとともに、新しい知識や情報を吸収する柔軟性を持って欲しいですね。

現在は、研究の舞台を現代に移し、東・中央ヨーロッパの大学生の民族意識やアイデンティティの作られ方について、アンケートや聴き取りなどの調査によって研究を進めています。皆さんも、東・中央ヨーロッパを鍵に、日本や世界の人や国を見つめませんか?

今ハマっていること★

p9_3スポーツ観戦です。ジャンルを問わず好きですが、特に今はサッカーにハマっています。実は、国際親善大会のために来日したスロバキア代表の通訳を務めたこともあるんですよ。