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がんの鑑別診断を迅速により確実に

三好 憲雄 先生

医学部
医学科 腫瘍病理学領域 助教
三好 憲雄 先生

医学部 医学科 腫瘍病理学領域 助教

三好 憲雄 先生

生体内での状態を保ちつつ、必要な情報を得る

超薄型鮮度保持サンプルホルダー内システム図

超薄型鮮度保持サンプルホルダー内システム図

がんの早期診断技術の開拓は、がん撲滅戦略事業として重要なもののひとつです。私は、15年以上に渡って、赤外線を用いたがんの診断機器の開発に力を注いできました。

これまでの病理診断法では、組織をホルマリン固定→薄切切片を作製→可視化するために色素で染めることで病変の細部が分かるように発展してきましたが、その状態は、実際の病変からかなり変質したものになります。また診断結果を得るまでに、日数がかかりました。

私は、手術中に取り出した組織の鮮度を保ちながら、迅速に診断することを目標に、機器開発に取り組んでいます。

赤外顕微鏡に、水蒸気と窒素混合ガスを供給する鮮度保持セルホルダーを取り付け、そこに試料を入れることでその組織の鮮度を保ちます。また、診断は、赤外分光法により、生体組織内に存在するタンパク質、脂質類、糖類、リン酸基を持つ核酸や水などの分子振動を観測し、相対的な存在量とその部位を特定して行います。現在行っている実験では、測定した情報を可視化するまでに15分程度で計測、定量化できるようになりました。

より精度の高い診断のために

がんの診断をより確実に行うために、得られた全ての情報をマッピングしたスペクトルからPCR分析(主成分回帰分析)を用いて検量線を作成し、そこから導き出される相互関係を組織全体に波及させ、がんの悪性度に応じて4色に色分けし、再構築するソフトを開発しました。このことにより、これまで形態学的診断において、より定量的診断が可能になると考えています。

高分化肺腺がんのH.&E.染色像とスペクトル範囲(1724.05-1431.06cm-1)を使用した4値化像 (赤色が初期癌領域)

この機器開発の中で、がん浸潤を繰り返しているがん周辺部の組織には、タンパク質の二次構造であるα-ヘリックス構造成分が多く存在しており、すでに壊死した部位ではコレステロールの沈着が多くなっていることが明らかになりました。タンパク質の酸化が促進され、その二次構造の変性が起こった結果であると考えられますが、活発に活動しているがん周辺部にα-ヘリックス構造成分がなぜ多いのかは、まだ分子生物学的には解明されておらず、オーミックな検索法が期待され、システマテックな生鮮組織の病態検査法の確立が必要とされます。

今後は、さらに外科標本での検討を重ね、手術室への導入に向けて機器のコンパクト化やソフトの簡易化、サンプル作成の簡便化などに取り組み、術中スクリーニング機器として完成させ、事業化を目指したいと考えています。

この研究に於いては、研究代表者として、

[1] H26年度:JSPS・科研費補助金:挑戦的萌芽研究課題:「癌診断におけるMRI画像と水分子状態に対する赤外分光画像の相関性の追究」

[2] H21-24年度:JST・先端計測分析技術・機器開発事業「迅速がん診断用赤外顕微装置の開発」

[3] H21-22年度:ものづくり中小企業製品開発等支援補助金 (実証等支援事業)「ポリ乳酸繊維の包帯、ガーゼなどの創傷治療実証及び性能評価-原田商事」

[4] H20-22年度:JSPS・科研費補助金:基盤研究(B-2)(一般) 課題:「癌組織内エックス元素分析電顕像と赤外分析画像計測の病態検査応用」

[5] H20-21年度:厚生労働科学研究費補助金・医療機器開発推進研究事業 (ナノメディシン研究)「がんを安全・高感度で鮮明に画像化できるナノサイズシュガーボールデンドリマー型新規MRI造影剤の開発研究」

[6] H19-21年度:(公財)若狭湾エネルギー研究センター・公募型共同研究事業:「実験前立腺癌に対する陽子線照射効果」

[7] H18-19年度:JST・産学共同シーズイノベーション化事業、顕在化ステージ「赤外線分光画像診断法の実証化と専用診断装置の開発調査研究」

[8] H17-18年度:JSPS・科学研究費補助金:特定領域研究(公募研究)課題「開発された超高感度光触媒ナノ粒子を投入した新しいがん治療への研究応用」

[9] H17-20年度:コスモ石油(株)・SBI-ALApromo(社)委任経理金「5-ALAのマウス皮膚への取り込みの研究」

[10] H15-20年度:Stiftelsen 財団 (Japanese-Swedish) 共同研究助成金 (研究助成奨学寄付金)「膀胱癌・前立腺癌の光線力学的及び陽子線による実験腫瘍の治療研究」

[11] H14-15年度:(財)北陸産業活性化センター・R&D推進研究助成金「分光分析技術を応用した新しい癌診断機器開発の可能性調査研究」

[12] H14-17年度:JSPS・科学研究費補助金:基盤研究(B-2)(一般) 課題「ラマン分光技術とフーリエ変換型顕微赤外(FT-IR)分光の臨床検査への応用研究」

[13] H11-12年度: JSPS・科学研究費補助金:基盤研究(C-2)(一般)課題「新腫瘍親和性物質と蛍光内視鏡におけるオプティカル生検の試み」

[14] H10-11年度:厚生省・がん研究助成金「がんの診断治療用光学機器の開発―新しい腫瘍親和性物質5-ALAによる診断治療」

以上の研究助成のご協力により、研究を進めさせていただいています。ここでみなさまに感謝の意を表したいと思います。誠にありがとうございます。