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放射線による影響を新手法により明らかにする

松尾 陽一郎 先生

附属国際原子力工学研究所
松尾 陽一郎 先生

附属国際原子力工学研究所

松尾 陽一郎 先生

放射線の生物学

teach_matuo02「原子力工学」はひとつの分野に見られがちですが、物理・化学・生物・機械・材料・情報・建築・安全・防災・社会科学など多くの分野による総合科学です。私はその中で、生体が放射線を受けたときの応答や、被ばく線量評価について、分子生物学の手法を用いて研究しています。

蛍光の量で測る新手法

プリントDNAがストレスなどの外的要因や細胞分裂といった内的要因などで傷ついた場合、傷ついた箇所を自ら修復するシステムを持っています。放射線によってもDNAは傷つきます。放射線がDNAに照射された場合、線量によっては修復機能が働かなくなり、細胞死や、DNAを構成する塩基配列が変わることによる突然変異やがん化が起きると考えられています。

10ナノメートル(ナノは10億分の1)ほどの短いDNA分子であるオリゴヌクレオチドをターゲットとして、放射線による損傷量を評価する手法の開発を進めています。

図1のように、オリゴヌクレオチドの末端に蛍光物質を塗布し、もう片方の末端にクエンチャー物質( 消光物質)を付けます。蛍光物質とクエンチャー物質が同一分子上にあるため、励起光を照射すると〈分子内励起移動〉によりエネルギーがクエンチャー物質で消費され、蛍光は発しません。放射線によりオリゴヌクレオチドに切断が生じれば、蛍光物質とクエンチャー物質が離れるので蛍光を観測できるようになり(図2)、その蛍光を介してオリゴヌクレオチドの切断を評価することができると考えています。

実験では、蛍光修飾したオリゴヌクレオチドに対してガンマ線や陽子線を照射します。10~100mGy(ミリグレイ)ほどの低線量のガンマ線や陽子線を照射した場合、線量に応じて観測される蛍光の強さが増加することが確認できました。従来の方法では、ミリグレイほどの線量の放射線による生体分子の影響を評価することは困難でした。

原子力技術とのあゆみ方

福島第一原発の事故をきっかけに、原子力や放射線について、わかったこと、わからないこと、必要なこと、備えるべき技術は何かと関心が高まっています。「人の命を預かる技術を生み出すもの」という使命感の下に、地域住民の方々と交流を深めながら研究に取り組んでいきたいと思います。

今ハマっていること★

teach_matuo04子どものころから「カエル」が好きで、置物やぬいぐるみなど200点ほど集めました。学会発表などの出張先等で見つけたカエルたちは研究室に飾っています。あまり増えすぎないように気をつけなければ…と思いつつもまた一個。