村田 航志

おいしさの脳科学

  • 村田 航志
  • MURATA Koushi
  • 医学部 助教 (神経科学)

Profile

福岡県出身。2005年、東京大学農学部生物生産科学課程生命化学専修卒業。2007年、東京大学大学院医学系研究科医科学専攻修士課程修了。2010年、日本学術振興会特別研究員。2011年、東京大学大学院医学系研究科機能生物学専攻医学博士課程修了。2012年東京大学大学院医学系研究科特任助教。2015年より現職。
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「おいしい」は未解明

 おいしいものを食べたとき、なんだか良い気持ちになりませんか。また、最初の一口はおいしくても食べ続けているうちに飽きてしまったり、同じものでもおなかいっぱいのときにはおいしさを感じにくくなったりもします。人の気持ちや感情は脳によって作られると考えられます。しかし、脳が「おいしい」「おいしくない」といった感情を生み出す仕組みはよく分かっていません。
 私は神経科学の分野で、ラットを使い、それらの感情が、脳のどこでどのように作られるのかを研究しています。

チョコとラットと機械学習

 私が取り組んだ研究で、ラットに嗜好性の高いチョコレートを食べさせた実験があります。これまで、ラットがおいしいと感じたときの反応として、舌の動きなどの表情を観察する方法が使われてきました。ただ、表情だけで、さまざまな種類の「快」を捉えるのは難しく、着目したのがラットの鳴き声です。
 ラットは、人間には聞こえない高周波数の音で鳴く、超音波発声(USV)を使ってコミュニケーションを取っています。私はこのUSVを録音し、普段の餌を食べたときと、ラットが好むチョコレートを食べたときの鳴き声を機械学習で比較、分析しました。その結果、チョコレートを食べたときに特有のUSVのパターンが現れることが分かりました。また、快感・依存にかかわることから報酬系と呼ばれる脳内神経系があるのですが、その神経系を抑える物質をラットに投与してみたところ、チョコを食べた場合でもそのUSVパターンが減少したのです。このことは、ラットも、食べ物の違いによって情動(この場合はおいしさなど)が変化し、それが鳴き声として現れていることを示唆しています。そして情動に関わる神経系の変化を、解剖などせずに、リアルタイムで調べられる可能性につながります。
 こうした鳴き声と脳の活動を結びつけることで、人のおいしさ体験を司る脳の場所を明らかにしたい。それは、食べ過ぎてしまう依存症やストレスなどでおいしさを感じられなくなる症状の根本を解明し、治療につながる研究に発展すると考えています。

 

ラットの摂食行動と発声を同時に記録する様子

It's My Favorite!

プロ野球、特に日本ハムファイターズが好きです。楽しそうに野球をしている姿に、研究も楽しみたいという気持ちを感じます。