髙村 映一郎

ミクロの分子が未来を変える、
次世代のナノテクノロジー

  • 髙村 映一郎
  • TAKAMURA Eiichiro
  • カーボンニュートラル推進本部 准教授(ナノバイオサイエンス)

Profile

福井県出身。2016年、福井大学工学研究科繊維先端工学専攻修士課程修了。2019年、福井大学工学研究科総合創成工学専攻博士課程修了。2019年3月、福井大学学術研究院工学系部門繊維先端工学講座助教。2022年4月、福井大学学術研究院工学系部門繊維先端工学講座講師。2024年4月、福井大学学術研究院基盤部門カーボンニュートラル推進本部准教授。
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「ナノ」から地球の課題を想う

 体内での化学反応を促進する「酵素」は、唾液に含まれるアミラーゼなどのように特定の物質(基質)だけに反応する優れた能力を持つ「生体触媒」で、この能力は体内にとどまらず産業分野でも幅広く応用されています。例えば糖尿病患者が使う血糖値測定センサ。これはセンサの電極上の酵素がグルコースを認識して電子を奪い、電極へと流すことで測定する仕組みです。
 実は酵素には電極へ電子を流しやすい「向き」があります。私はその向きをナノレベルで制御し、最も効率よく電子を取り出せるバイオセンサやバイオ電池の開発を進めてきました。ナノスケールで自分たちが思い描く機能を持つ生体分子を開発する、それが私の研究です。

牛の発情を科学で見える化!

 「生体分子の向きや形を制御して電子を取り出す」という仕組みを発展させた研究の1つに、県などと共同開発した雌牛の発情期を化学的に検知するセンシング技術があります。
 肉牛は、雌牛の発情から一定期間内に人工授精を行う必要がありますが、そのタイミングは飼育者の経験頼みで成功率は約50%にとどまり、より安定的な授精が課題でした。そこで、発情期に多く分泌される「黄体形成ホルモン(LH)」を標的とし、LHに特異的に結合するDNAを組み込んだセンサを開発。LHが結合するとDNAが変形して電極に近づき、電極での酸化還元反応によって電流が流れます。LHが多いほど電流も大きくなる明快な仕組みを構築することで、高感度なリアルタイム測定を可能にしました。
 実はこのシステムは、地球環境の課題につながりますが、それはなぜか?発情期を正確に把握して人工授精を行うことで不要な飼育期間を省略できます。ある試算では、牛100頭規模の農場で、飼料由来のCO2排出量を年間約5~10%削減できる可能性があります。さらにこのセンシング技術が一般化すれば、発情だけでなく健康状態の遠隔監視への応用も考えられます。家畜や畜産農家にとってだけでなく、適切な飼育管理によって、我々の食の安全と地球の環境どちらにも貢献する存在となるはずです。温室効果ガス排出をゼロにする「カーボンニュートラル」も実現可能かもしれません。

 

「福井年に数回農場へ行きます。牛はデカいです

It's My Favorite!

昔から歌うことが好きで、よく一人でカラオケに行ったり知り合いのお店で歌ったりしています。どこかでお会いしたら一曲聴かせてください。