コロナ禍を越え
新たな感染症に備える
- 酒巻 一平
- SAKAMAKI Ippei
- 医学部 教授(感染症学)
Profile
1965年、埼玉県生まれ。1994年、福井医科大学(現福井大学医学部)医学部 医学科卒業。1996年、広島赤十字原爆病院内科医員。2005年、国立病院機構あわら病院内科医長。2009年、アメリカ合衆国テキサス大学MDアンダーソンがんセンターリンパ腫骨髄腫部門研究員。2013年、福井大学医学部助教。2016年、富山大学医学部講師。2018年、富山大学医学部准教授。2021年より現職。
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最前線の経験を糧に専門家育成
私は昨年3月まで富山大学附属病院の感染症科で、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)対応の渦中にいました。重症者には人工心肺装置「ECMO(エクモ)」を使って治療に当たり、派遣された他の医療機関や介護施設でも一瞬の気のゆるみも許されない状況を経験しました。昨年4月、本学医学部に「感染症学講座(寄附講座)」が設置されたのを機に着任し、すぐに病棟のレッドゾーン(感染リスクの高い領域)に入り多くの患者さんと向き合ってきました。
COVID-19は、福井でも多くの人が感染し、医療従事者の不足と感染症対策の困難さが浮き彫りになっています。「自分で診る感染症専門医」であることが私のモットー。臨床にも関わることによってCOVID-19に対する新たな知見を重ね、さらに未知のウイルスにも対処できる医療従事者の養成を進めていきます。
感染症で亡くなる方を無くす
はるか昔から、人類はペストや天然痘などいくつもの感染症に命を脅かされてきました。確かな治療法がなかった当時、パンデミック(世界的大流行)が起きる度、世界の歴史を変えるほどの影響を受けました。
私は、免疫反応や各種の炎症に関わるタンパク質「サイトカイン」に着目し、抗菌薬や抗ウイルス薬の抗炎症作用について研究を進めています。サイトカインは細胞から血液中に分泌されると発熱や倦怠感、頭痛などの症状を起こすことがありますが、これは同時に免疫反応が起こっているとも言えます。しかし、重症感染症では血液中にサイトカインが大量に放出され、免疫が暴走するサイトカインストームが起こると死に至ることもあるため、サイトカイン産生の抑制が必要となるのです。
サイトカイン抑制に関してはヒト由来の培養細胞を使い、抗菌薬や抗ウイルス薬など、抗微生物薬の効果を探る実験と検証を行っています。完全にサイトカイン産生を抑制してしまえば免疫反応が起こらなくなるので、抗微生物活性と効果的なサイトカイン抑制効果のある薬剤を見つけることができれば、重症感染症に対する有効な治療薬の候補になるかもしれません。
スーパー銭湯などの大きな風呂が好きですが、COVID-19の感染拡大であまり行けなくなってしましました。早く安心して行けるように願っています。