清水 麻友美

暴力と警察の問題を
理論的かつ経験的に考える

  • 清水 麻友美
  • SHIMIZU Mayumi
  • 国際地域学部 講師(ラテンアメリカ政治、文化社会学、行政学)

Profile

東京都出身。上智大学外国語学部ポルトガル語学科卒業。2009年、東京大学大学院公共政策学教育部専門職学位課程修了。東京大学法学政治学研究科博士課程在学中に、米国・イェール大学に留学。2015年、サンパウロ大学大学院社会学研究科博士課程修了。東北大学法学部助教を経て、2023年より現職。
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「貧困」「暴力」を目の当たりに

 きっかけは大学時代、訪れたブラジル北東部で暴力事件に遭って亡くなったと思わしき方の遺体を目の当たりにした経験です。貧困と暴力が切り離せない形で存在している現実に衝撃を受け、そうした社会で生きるとはどういうことか深く考えるようになりました。大学卒業後に1年間、ブラジルの国際協力の現場で実務経験を積みました。しかし、問題解決には学術的なアプローチも必要だと、日本で大学院に入り直し公共政策を、その後ブラジルの大学院で社会学を学びました。そこで学んだ政治学、社会学、行政学……。社会に存在する様々な問題を多角的に捉えるために、どの学問も私の研究には欠かせません。
 「暴力」とは、物理的に重大な害を加えることだけではありません。言葉による加害もありますし、その強度や形態、発生する場面などもさまざまであり、何が暴力で、何が違うのか定義すること自体、暴力性を持つ危うさがあります。ブラジルの場合、警察官による市民への暴力が社会的に問題になっていたこともあり、私は「暴力」と「警察」を主な研究対象とすることにしました。
 暴力が起こる要因はさまざまあります。私は警察の中で“常識だ” とされる共通認識が暴力行動につながっているのではないかと考え、フィールドワークを通じて警察官が共有する考え方や行動様式を探っています。

 

サンパウロ州でのフィールドワークで撮影した警察官の日常業務の様子

渦中の人にとっての「意味」がカギ

 社会問題を探る際、多くの人は客観的に把握できる要因を追求しますが、私はその渦中にある人の信念や価値観といった「意味の世界」に着目し分析しています。人は自分独自の信念や世界観を持っていると思っていても、社会の中で必ず他者の影響を受けています。気付いたら仲間うちで何となく似た考えを持っているという経験は誰にでもあるのではないでしょうか。
 加害者の視点について理解を深めることは、なぜ暴力が発生するのかを考えるうえで欠かせないものであると思いますし、また暴力を減らすための政策立案や制度構築にも有用と考えます。研究を通じた社会問題への取り組みに加え、学生の皆さんが社会の課題に挑む拠り所となる考え方を伝えられたらと考えています。

It's My Favorite!

小学生の頃に家族旅行で訪れたことがきっかけで、北海道の美瑛町が好きになり、最近は毎年のように訪れています。シーズンごとに違う風景の美しさがあって、とても癒されます。