成人自閉スペクトラム症者と定型発達者における身体部位の脳内表象構造が類似~fMRIによるASDの新たな理解~

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本研究成果のポイント

◆コミュニケーションに困難を抱える自閉スペクトラム症(ASD)者は、身体部位や顔の知覚が苦手とされています。
◆成人のASD者が人の身体や顔をどのように見ているのかを、外側後頭側頭皮(LOTC)という脳部位の活動から調べました。
◆表象類似度分析という解析を行ったところ、ASD者も定型発達(TD)者も同じように、身体部位を見たときの脳活動のパターンを「顔」「手足」「胴体」という3つのクラスターに分けることができました。
◆この結果は、「身体部位の見え方」に関する低次な視覚的働きが、ASD者とTD者で類似している可能性を示しています。

概要

 福井大学の小坂 浩隆(こさか ひろたか)教授は、早稲田大学人間科学学術院の栗原 勇人(くりはら ゆうと)助教、大須 理英子(おおす りえこ)教授、岡本 悠子(おかもと ゆうこ)客員次席研究員らを中心とした研究グループと共同で、成人の自閉スペクトラム症(ASD)者が他者の身体をどのように認識しているのかを明らかにする研究を行いました。fMRIという脳の活動を可視化する技術を用いて、身体の各部位を見ているときの外側後頭側頭皮(LOTC)という脳領域の反応を比較しました。表象類似度分析(RSA)という解析を行ったところ、ASD者と定型発達(TD)者とのあいだで、顔や手足、胴体といった部位ごとの分類パターンがよく似ていることが分かりました。これはASD者が他者と関わる際に困難を感じる理由が「見え方」そのものの違いではなく、見えた情報をどのように解釈・理解するかといった、より高度な認知の過程にある可能性を示しています。
 本研究成果は、「Imaging Neuroscience」に2025年6月5日にオンライン公開されました。

論文名

Visual Body Part Representation of the Lateral Occipitotemporal Cortex in Individuals with Autism Spectrum Disorder: A Univariate and Multivariate fMRI Study

著者

栗原勇人(早稲田大学人間科学学術院)、小坂浩隆(福井大学医学系部門)、Bianca Schuster(ウィーン大学)、北田亮(神戸大学)、河内山隆紀 (国際電気通信基礎技術研究所)、岡沢秀彦(福井大学高エネルギー医学研究センター)、大須理英子(早稲田大学人間科学学術院)、岡本悠子(早稲田大学人間科学学術院)

掲載誌

「Imaging Neuroscience」

DOI

10.1162/imag.a.24

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│ 2025年7月4日 │
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