◆ヒトデで血小板に酷似した「無核※4の細胞断片」を発見:従来の常識を覆し、哺乳類に特有とされてきた血小板に酷似した無核の細胞断片が、無脊椎動物にも存在することを明らかにしました。
◆免疫と止血の両機能を併せ持つ:発見された無核の細胞断片が、創傷部位に集積する機能と、細胞外小胞(EVs)※5を介して免疫応答を調節する機能を併せ持つことを突き止めました。
◆血小板形成メカニズムの進化に新たな洞察:無核の細胞断片が、哺乳類の血小板形成に類似した「出芽」や細胞突起の「断片化」によって形成されることを確認しました。このことは、血小板形成機構が進化的に古くから存在したことを強く示唆します。
福井大学の多米晃裕博士は、慶應義塾大学 自然科学研究教育センター/文学部生物学教室の古川亮平准教授、および同大学大学院理工学研究科後期博士課程3年の南方宏太らのグループと共同で、私たちの血液中で止血を担う「血小板※1」の祖先と考えられる細胞をヒトデの体内で発見しました。これまで哺乳類特有と考えられてきた「核を持たない血小板」が、私たちと同じ祖先を持つヒトデにも存在し、創傷治癒と免疫応答の両方に貢献していることを明らかにしました。
この発見は、血小板の機能が哺乳類で独自に獲得されたものではなく、進化的に非常に古い時代から、免疫と止血という二つの重要な生命維持機能が密接に連携しながら発展してきたことを示唆するものです。本成果は、血小板の進化に関する長年の常識を覆すものであり、生命の生体防御システムの根源的なメカニズムの解明に向けた、重要な基盤となることが期待されます。
Platelet-like anucleate cell fragments mediate wound healing and immune response in the sea star Patiria pectinifera.
南方宏太 慶應義塾大学大学院理工学研究科
田口瑞姫 慶應義塾大学自然科学研究教育センター/文学部生物学教室
多米晃裕 福井大学ライフサイエンス支援センター
倉石立 慶應義塾大学自然科学研究教育センター/文学部生物学教室
古川亮平 慶應義塾大学自然科学研究教育センター/文学部生物学教室
「Journal of Immunology」
10.1093/jimmun/vkaf246
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